夢が志に変わる時期

今年(2013年)の春、シアトルにあるWEBホスティング会社で働いていた僕は、VISAの更新のタイミングに別会社へ転職することになった。そして、転職先の企業では3ヶ月の研修後、ニューヨークのオフィスで働くことになっていた。

もともとアメリカで働くことは、20歳の頃に体験したLA留学をきっかけに、ずっと僕が抱いていた夢だった。そして、家族・友人など周りの多くの協力もあり、目標にしていたタイムリミット30歳ギリギリにして、なんとかシアトルの会社に就職が決まり、夢のアメリカ生活がスタートした。

シアトルの会社では、渡米目的の一つである「英語を学ぶ」という環境としては最適だったが、正直、実務においてはまったくと言っていい程、満足できる環境ではなかった。会社が提供するサービスが、社会価値があり顧客にとってもプラスになるとは思えなかったのです。。。

なので、VISAの有効期限であった1年半の間は、あくまで英語の勉強を最優先目的として捉え、その後は、アメリカで働ける環境を大前提に、もっと仕事の質が高い会社に転職することに決め、無事それを実現することができた。

転職後、ニューヨーク勤務に向け、東京のオフィスで研修として働いていた。しかし、徐々に会社の実態がわかるにつれ、シアトルの会社で感じた想いが再び・・・。面接時に社長から聞いた言葉を鵜吞みにし、事前に自分でしっかり下調べをしてなかったばかりに、最悪にもまた同じ事を繰り返してしまったのです。

そして、夢のアメリカ生活の復帰を目前にして

「このままでええんか!?人生のなかでも最も活躍できるこの大切な時期を、また英語が最優先目的の生活(仕事)でええんか?質の悪い仕事やサービスを顧客に提供する企業の、社会における存在意義って何や?そんな、自分がいいとも思わない企業やサービスに貢献しててええんか?」

と自分のなかで葛藤するなか、そのころ読んでいた孫正義さんにまつわる本(『孫昌義〜平成の龍馬伝説〜』著者:津久居樹里)にあった一文が心に突き刺さりました。

「“夢”というのは漠然とした個人の願望。車を買いたい、家を持ちたいといった夢はみんな、個々人の未来への願望。でも、その個々人の願望を遥かに超えて、多くの人々の夢、多くの人々の願望をかなえてやろうじゃないかという気概を“志”というんだ。夢は快い願望だが、志は厳しい未来への挑戦だ。だから、“志”と“夢”ではまったく次元がちがうぞ。“夢”を追うなんて程度の男になってはいかん。“志”を高く持て!」

これは、多摩大学名誉学長でもある野田一夫さんが孫正義さんに言われた言葉らしいのですが、孫さん同様、僕もものすごく衝撃を受け、次のような考えに至りました。(この言葉を聞いた瞬間に、野田さんは孫さんにとっての吉田松陰になったと、孫さんは表現しています。)

「アメリカ生活は俺の“夢”であって、あくまで個人の願望。自分自身が納得もできない仕事やサービスを、作り笑顔で社会や顧客に提供することで、個人の願望を実現するのは、あまりに利己的で自分本位。未完成な社会環境のなか、一生の間に夢の実現も叶わない人もいるなか、恵まれた環境のおかげで、自分は一度は夢を実現できたんやし、これからはその夢を叶えてくれた環境に感謝するとともに、よりよい世の中の創造に貢献することが自分の宿命だと、高い“志”を持って生きていくべきやな。」

そして、3ヶ月の研修期間満了後に辞職しました。

20131201-195934.jpg

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です